早いですね。今年も残すところあと僅かとなりました。毎年恒例になりましたが、今月はPWMワタナベが10枚のレコードを紹介させていただきます。

今回はいつもと趣向を変えて「2000年代の日本語の歌」というテーマです。21世紀に日本で生まれた日本語の歌にフォーカスを当てて10枚選んでみました。試聴リンク(♪)も付けておきました。今年は、日本の音楽にも良いものが沢山あることに気付かされた年だったなぁ。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

01,02,03,04,05,06,07,08,09,10:
Toru WATANABE (pee-wee marquette)



SOWELU / LOVE & I.
(RHYTHM ZONE)


オルガンバー周辺では既にお馴染みかと思いますが、SOFFet(ソッフェ)がとても好きです。ジャズとラップの融合なんて随分前からあるアプローチですが、SOFFetのメロディ&ハーモニー重視の作風はとてもシンパシーを感じます。好きな曲はいっぱいあるけれど、いちばん好きなのは、女性シンガーSOWELU(ソエル)をフィーチャーした「THE MOMENT I SAW YOU」。甘美な男女デュエットで通すウエストコーストジャズのように爽やかなスウィングナンバー。


在日ファンクとROY / エスケープ
(P-VINE)


国産タイトゥン・アップの大名曲。在日ファンクというと、ジェームズ・ブラウンのようなゴリゴリのファンク・ナンバーのイメージしかなかったのですが、2010年末にリリースされたこのシングルのカップリングに収録されている「京都」という曲は特別な輝きを放っている。中盤の「京都&レスポンス」も楽しくてゴキゲンです。別のアルバムではライヴ・ヴァージョンが収められていますが、絶対ライヴが盛り上がるだろうなぁ。個人的に京都のテーマソングに決定です。


MELTING SOUL / うたのちから
(SWEET SOUL RECORDS)


関西を中心に活動する5人組グループ、メルティング・ソウル。ジャズやブラジル音楽をベースにしたダンスナンバーが目白押しですが、紅一点の女性ヴォーカリスト、RISACOのパンチのあるヴォーカルが魅力です。好きな盤が多くてどれを選ぶか悩んだのですが、「STRUGGLING DANCE」が収録されている2004年作をチョイスしました。冒頭の静かなボサノヴァっぽいイントロからグルーヴィなラテンソウルに展開するところはいつも身震いする。まさに歌の力を感じさせます。


THE CORONA / 裏と表のカサノヴァ
(STARMAN VISION)


今年出会った曲でいちばん衝撃を受けた一曲「裏と表のカサノヴァ」。2003年にデビューしたコロナは、当初アフリカのリズムとヨーロッパの音楽を融合した「チャランガ」と呼ばれるゴッタ煮サウンドを演っていましたが、2006年の本作では1970年代NYラテンに大接近。「裏と表のカサノヴァ」は、エディ・パルミエリに捧げたハードな日本語サルサで、究極のキラーチューン。後のアルバムでもこの曲を再演しますが、本作のヴァージョンのほうが圧倒的に強力です。


モダーン今夜 / 赤い夜の足音
(MOTEL BLEU)


モダーン今夜は、ヴォーカルの永山マキを中心としたグループで、2002年から東京で活動している。今まで4枚リリースしていて、どの作品にも好きな曲があるのですが、いちばん思い入れが深いのはこのデビュー作(2003年)です。「レジーナ」という曲は、キャバレージャズっぽい雰囲気のダンスナンバー。僕が絶対に反応してしまうコード進行で、中盤にヴァイオリンのソロが入る辺りもニヤリとしてしまいます。感傷的なメロディのボサノヴァ曲「星屑サンバ」も素敵です。


UNCHAIN / MUSIC IS THE KEY (FLUCTUS)

京都出身の4人組ロックバンド、アンチェイン。ブラックミュージックの影響を受けたバンドサウンドが魅力です。本作は2009年にリリースされた通算二枚目のアルバムです。"♪うちに帰ろう"と歌われるエンディング曲「PLACES IN THE HEART」が素晴らしい。アコースティックなスウィングナンバーで、これまでのアンチェインの作風とは異なる女性っぽい雰囲気を醸し出している。サビの込み上げるゴスペル風味の雰囲気とかたまんないです。


NOTESMITH / CALLING YOU (オーマガトキ)

京都で活動する金子博征+益本祐子の男女二人組ユニット、ノートスミスが2006年にリリースしたアルバム。女性ヴォーカルをフィーチャーしたジャズやボサノヴァがベースの音楽なのですが、この中に含まれる「惑星」という曲が奇跡的に素晴らしいです。アコースティックギターがバッキングの三拍子ボサノヴァで、ケニー・ランキン「IN THE NAME OF LOVE」のようなテイスト。間奏のスキャットも良い雰囲気です。


南国ドロップス / 社交街の誘惑 (NAN59 RECORD)

1996年から2009年まで沖縄で活動していた大所帯バンド、南国ドロップスのデビュー盤(2007年)が素晴らしい。どことなくエキゾチック。日本のポップスからソウルやジャズやブラジルまで、多方位をフラットにアンテナを張るのは、沖縄ならではのアティチュードのような気がする。名曲が多いのですが、日本のメロウグルーヴのクラシック、大貫妙子の「都会」をカヴァーをしていて、これが実に素晴らしい。初代ヴォーカリストの首里フジコの作品も要チェックです。


たなかりか / JAPANESE SONGBOOK (PONY CANYON)

広島県出身の女性ジャズシンガー、たなかりか。これまで英語のスタンダードナンバーを中心としたレパートリーでしたが、今年リリースしたアルバムでは、リトル・クリーチャーズの鈴木正人をプロデューサーに迎え、ジャパニーズ・ポップスのカヴァー集をリリースした。小沢健二「流れ星ビバップ」やキリンジ「エイリアンズ」の渋いカヴァーも良かったですが、一番嬉しかったのが、伊藤銀次「こぬか雨」のカヴァー。ジャジーなメロウグルーヴで大好きな曲です。


南波志帆 / 君に届くかな、私。
(LD&K)


福岡県出身の南波志帆はホリプロ所属の女性シンガー。彼女が2009年に本作をリリースしたとき、彼女はまだ16歳の現役高校生だった。このアルバムを特別なものにしているのは、キリンジの堀込高樹が提供した「プールの青は嘘の青」に尽きる。キリンジの提供作品は数あれど、この曲が最高傑作だと思っている。彼女のヴォーカルは決して安定していないけれど、そのフワフワした感覚がこの切なくて甘酸っぱい青春ソングにマッチしている気がするのです。