2004.8
小学生の頃の話。8月終わりに近づくとそれまで溜めに溜めていた「夏休みの宿題」のことが気になってくる。特にヤバかったのが日記帳。昔の天気のことなんか覚えてないし、あの日は何やったっけなぁーと1ヶ月も前の記憶を断片を手繰ってみるのでした。

今月のお題は「夏休みの宿題〜絵日記ならぬ音日記」。8月の出来事を絵日記風に綴ってみました。なお一部(大部分?)フィクションも含まれておりますので悪しからず。




SIMONETTI E ORCHESTRA RGE / SAMBA 707 (RGE)

8月1日(日)晴れ ブラジルへ
ブラジルVARIG航空のジャンボジェット機"ボーイング707"に乗って一路ブラジルへ。窓から見えるこの世のものとは思えない美しい風景。機内ではシモネッティ楽団の洗練されたジャズボッサが心地よく響いている。女性スキャットから始まってきらびやかなチャイムをフィーチャーした艶のあるアンサンブル。しかしよく耳を済ませてみると、家庭にあったこんな物まで楽器にしちゃいましたー的な前衛的なミュージック・コンクレートもアリ。



ROGER SARBIB / MADEIRA LOVE (DECCA)

8月3日(火)晴れのち曇り 夏の祭の事
ふと通りかかったリオの大きな観光ホテルの中庭で華やかなお祭りが催されていた。どうやらホテルのお抱えバンドが盛り上げているようだ。無国籍な風貌で多様なサウンドを聴かせる彼等。まるでジャケットに写るROGER SARBIBとそのバックコンボのよう。陽気なラテンを中心に「BROTINHO」等の軽快なボサナンバーも良いが、心に響いたのは彼等のオリジナル「MADEIRA LOVE」。聴衆の反応はイマイチだったけれど、とても良いポップスだった。



DAKILA / DAKILA (EPIC)

8月7日(土)晴れ、夕方にスコール アマゾン奥地での出来事
リオの観光とレコードハンティングにも次第に飽きてきて、アマゾンの奥地に移動してみることに。そこで出会ったダキラという若い男性7人組バンドの演奏に魅了されてしまった。サンタナやマロのような溌剌としたラテンロック。特に10分以上もある壮大な組曲「MAKIBAKA / IKALAT」は今の日本のダンスフロアでもイケそうなグルーヴ感だ。でも話を聞いてみると、実は彼らはフィリピン出身のバンドだった。



FREDDY BALTA ET SON ENSEMBLE / MON ONCLE (PHILIPS)

8月12日(木)晴れ やはり蒸し暑い日本の夏
10日間のブラジル旅行から帰ってからというもの、何もする気も起きない日々が続いている。よくクーラーの効いた部屋のテレビモニターからはジャック・タチ映画『僕の叔父さんの休暇』が流れている。このフランスのフレディ・バルタによる『僕の伯父さん』のカヴァー・シングルもオリジナル・ヴァージョン同様に、涼しさを呼び起こすミラクルが潜んでいるような気がする。



GUIDO PISTOCCHI / 12 MOTIVI VALIDI PER RESTARE A CASA (CDG)

8月15日(日)晴れ 夜中に観た映画の事
世の中は夏休み。在り来たりな夜更かしも高尚な連休の過ごし方の一つと言う訳で深夜映画を観る。たぶん古いイタリア映画だろうけど、途中から観たので内容がさっぱり分からない。でも、とても感動する内容だったに違いない。流れていた音楽が素晴しかったから。伊のトランペッターGUIDO PISTOCHIのレコードはそんな佇まいの素晴しい1枚。全編軽やかなボサビートとPISTOCCHIの柔和なトランペットの音色。そしてPAOLA ORLANDIの優しく包み込むようなスキャットが聴ける。サビから一気に駆ける「CAFE」は曲自体が素晴しい名画のよう。



BAROQUE JAZZ TRIO / S.T. (L'AROME PRODUCTIONS)

8月16日(月)晴れ 夜中に観たテレビの事
真夜中にテレビを観ると、総勢50名にも及ぶオーケストラが演奏していた。壮大なストリングスの優雅な響きが非常に心地良いけれど、どうにも指揮者が汗だくで暑苦しく観ていられない。仕方ないので諦めてレコードを聴く事にしたけどクラッシックのレコードが無い。そこで聴いたのが仏はSaravahレーベルのBaroque Jazz TrioのLP。ピアノ、ヴァイオリン、ドラムと言う不思議な演奏で聴かせる奥ゆかしいバロックジャズ作品。華麗なラテン・バロックジャズの「LATIN BAROQUE」を聴いたら余りの格好良さに中々寝つけなかった。



RAY SWINFIELD / ONE FOR RAY (MORGAN)

8月20日(金)晴れ カイピリーニャの味が忘れられない
久しぶりに会った友人とお酒を飲みに行くことに。僕の行きつけのバーではいつもマスターが気の効いたジャズを掛けてくれる。ふと、友人との会話をさえぎる様な心に留まるフレーズが流れてきた。マスターにその曲のことを尋ねると、女性の写ったジャケットを嬉しそうに差し出してくれた。あのVOICES IN LATINをリリースしているイギリスMORGANレーベルのラウンジジャズ。真夏の夜、そして美味しいお酒が良く似合う。



RUFUS HARLEY W/ GEORGES ARVANITAS TRIO / FROM PHILADELPHIA TO PARIS (CARRERE)

8月23日(月)曇り 真夏の涼しい昼下がりの事
今日は朝から曇りで涼しかった。いつもはうるさい蝉の鳴き声もあまり気にならない。 ふとテレビを観るとスコットランドの民族衣装をまとった男性が面白い楽器を鳴らし ている。昔は戦争時にも用いられたその悲しい音色の楽器はバグパイプと言うそうだ。 そのバグパイプ奏者RUFUS HARLEYが88年に仏でGEORGES ARVANITASのピアノトリオを バックに録音した作品。サックスとも違うその音色はモーダルで美しい曲に良く合う。 アルバムのラストを飾る「NANCY WITH THE LAUGHING FACE」がその感動的な好例。た だ美しい。



JIMMY DAVIS AND NORMA LEE / THE GIRL FROM IPANEMA (WYNCOTE)

8月25日(水)晴れ時々曇り 夏の終わりのビーチ
8月も終わりに近づくと海で泳ぐ人もめっきり少なくなる。暑い夏が終わっていく寂しさを感じながら、僕は夕暮れ時のビーチを歩いていた。肌を撫でる風も涼しく人影もまばらで寂しさ満点だ。片付け始めている海の家の小さなスピーカーからジミー・デイヴィスの「JASIMINE」が流れていた。煌びやかなピアノとヴィブラフォンの甘美な響き。ビーチを歩く女性のシルエットがひときわ美しく輝いた。



BILLY WOOTEN & SPECIAL FRIENDS / IN THIS WORLD (---)

8月31日(火) 雨のち晴れ 虹の真下で流れる音楽の事
残暑厳しく睨み付ける太陽までも洗い流してしまいそうな、夏の終わりを告げるスコールが降り注ぐ。降りしきる雨が突然、嘘のように止むと同時に、空にはさっきと同じ顔をした太陽が、七色に輝く虹を引き連れて輝いていた。遥か遠くまでかかる虹の真下、頭の中では軽やかなヴィブラフォンの音色と "WE MUST SHARE THIS WORLD TOGETHER" と言う素晴しいフレーズが響き渡った。遠くインディアナポリスで紡ぎ出されたヴァイブ=「IN THIS WORLD」は、虹を伝って世界中を繋ぎ、時空を超えてポジティヴな輝きを放ち続ける。




01,03,04,07,09: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,05,06,08,10: Masao MARUYAMA (musique dessinee)