2004.7
夏ですね。海に行って、日焼けしたり、泳いだり、バーベキューしたり、スイカ割ったり・・・思いっきり夏の海を満喫した後、水平線に沈む夕陽を見たときにちょっと感傷的な気分になってみたり。そんな時に聴きたくなる音楽ってきっとあるのではないでしょうか。

今月のお題は「美メロ」。海の夕陽を眺めながら聴く美メロの最高ですが、フロアで爆音で聴いて感じる美しいメロディにはいつも感動させられます。まぁ、ここをご覧になってる皆さんはご存知なのでしょうけど。




HIDEO ICHIKAWA / ON THE TRADE WIND (PLANETS)

初期のTAKTジャズの名盤からその名を列ね、60年代の日本のジャズシーンから活躍してきた名ピアニスト市川秀男氏の77年のトリオ+1名義のライブ録音盤。映画『白雪姫』の主題曲「SOMEDAY MY PRICE WILL COME」を除いては氏のオリジナルナンバーで占められている力演です。取り分けその美しくも感動的なメロディーが心地良く響き渡るタイトル曲「ON THE TRADE WIND」が素晴しい出来。パーカッションを交えたゆったりしたリズムと美しいピアノの音色が絶妙に溶け合います。



ALAIN ROMANS / MIO ZIO (MON ONCLE) (RCA ITALIANA)

ジャック・タチ映画『僕の叔父さん』のオープニング。このほのぼのとしつつも涼しさを呼び寄せるサウンドの虜になってこの曲のカヴァーがあれば手当たり次第に買ってしまう僕ですが、これは最近手に入れたカヴァー・シングル。ムッシュ・ユロのくわえタバコのジャケも素敵な1958年のイタリア盤です。ALAIN ROMANSは『僕の伯父さん』のサントラの作曲者としてクレジットされている人物。ハープシコードを多用したジャジーなアレンジで素敵です。



DALMO CASTELO / MEU RETRATO (CHANTECLER)

DALMO CASTELOはブラジルのSSW、有名なシコ・ブアルキ等に雰囲気の近い感じでしょうか。この1977年の作品は、ほぼ全曲彼が書いたナンバーで、もちろん自ら優しい歌声で歌っています。エレクトリックピアノを担当したジョアン・ドナートやネコ等バックの演奏もメロウなサンバと言った趣で素晴しいのですが、特筆すべきは彼の書いた美しくポップなメロディーの数々でしょう。派手さは無いけれど何度でも聴いてしまう普段着のメロディーが最初から最後まで楽しめるアルバムです。



ISABELLE / LA JOURNEE D'ISABELLE (ODEON/EMI)

フランスのウィスパリング・ビューティー、イサベル。プロントでは通算3度目の登場ですが、多分これがデビュー盤だと思う。「MON VOISIN」は仏産ソフトサウンディング・ボッサの最高峰と言いたいほどの超名曲。彼女の囁くようなヴォイスと前半の抑制の効いた演奏がストリングスが入って一気に解き放たれる瞬間にいつも身震いしてます。シュガーショップのヴァージョンも人気のジャズワルツ「PAPA ME LAISSE ALLER A LA VILLE CE SOIR」も最高。



YVAN DAUTIN / LE JOUR SE LEVE DU PIED GAUCHE (DISC AZ)

冴えない感じの風貌の仏のSSW、YVAN DAUTINの1981年の作品。声質が何となく眼鏡ジャケットのLPが人気のPAUL LOUKAに近い感じですが、アルバム全体の印象は風貌と同じく冴えない感じの感傷的な楽曲が多く、やや湿っぽいです。ただ1曲「APRES BIEN DES ANNEES D'ERRANCE」はそんな中にあっても光を放つ美しいメロディーとメロウなフィーリングを合わせ持つボサノヴァで素晴しい。イントロの軽快なギターのカッティングから引き込まれて行きます。



EYDIE GORME / LA GORME (GALA)

『BLAME IT ON THE BOSSA NOVA』が有名なアメリカのポピューラ歌手、イーディ・ゴーメ。これは彼女の人気もいまいち低迷していた1976年のアルバム。微妙にディスコに傾倒したサウンドで全体的にクオリティー高めですが、白眉なのは「DE REPENTE (SUDDENLY)」。ここ2〜3年で急激に人気を得たアルデマロ・ロメロ作の大変美しいナンバーで、彼女は軽いディスコ風サウンドに乗って気持ちよさそうに歌っています。



MARCO DI MARCO TRIO / AT THE LIVING ROOM (DISQUES ESPERANCE)

名盤『MY LONDON FRIENDS』で見事シーンに返り咲いた、イタリアはボローニャ出身の名ジャズピアニストMARCO DI MARCOが1973年にトリオ名義でパリで録音した傑作盤。1970年に同面子、同地で録音された彼の初のリーダー作『UN AUTUNNO A PARIGI』に収録の「LE CAHT QUI PECHE」も捨て難いですが、『美メロ』と言う聴点では、そのイントロから弾かれるピアノのメロディーラインが余りにも美しい「DOPO」に軍配が上がります。いささか大袈裟ではありますが、言葉を失う美しさです。



BERGENDY SZALONZENKAR / EN TANCOLNEK VELED... (BRAVO)

東欧ハンガリーの総勢11人の大所帯グループの1984年のアルバム。何てことの無い1980年代ポップスが大半を占めるのですが、ただ一曲だけ「RIOI KARNEVAL」という美メロのサンバが収められていて、何度も繰り返し聴いています。サンバ・ブレイク&ホイッスルから始まって、透明感溢れるパーカッシヴなサウンドに切ないメロディー、ダンディな男性ヴォーカル&コーラスに今にも泣き出しそうになりそうです。



BEAGLE / THE THINGS THAT WE SAY (???)

1990年代初頭に日本で人気が高かったスウェーディッシュ・ポップなグループ達の中でも地味に人気の高かったビーグルの1992年の大傑作シングル。グループ名通りビーグル犬をあしらった可愛らしいジャケットも印象的なLPにも清々しくも美しいメロディーのポップナンバーが満載でしたが、この「THE THINGS THAT WE SAY」はメロディーの美しさ、キラキラ輝く高揚感においては間違い無く彼等のベストナンバーの一つでしょう。赤面するほどドラマチック、そして感動的です。



RAJIE / HEART TO HEART (CBS)

日本人女性ヴォーカリスト、ラジの1977年のデビュー盤。後藤次利、高橋ユキヒロ、鈴木茂、斉藤ノブ、南佳孝、坂本龍一・・・豪華サポートを得たキラメキ感満点のシティポップス。特に南佳孝とのデュエット曲「THE TOKYO TASTE」は、山下達郎〜ティンパンアレイを経由して現在では流線形辺りに受け継がれる美しすぎるメロディーの極上ナンバー。ガチッとした硬質なリズム隊とメロウな鍵盤は、東京の夏の夜の少しひんやりとした感覚を思わせます。




02,04,06,08,10: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,03,05,07,09: Masao MARUYAMA (musique dessinee)