2004.6
伝説のプロ・ボクサー、モハメド・アリの自伝映画『MUHAMMAD ALI IN "THE GREATEST"』のサントラに「アリ・ボンバイエ」って曲が入ってます。この曲はクラブでもちょっとした人気みたいだけど、アントニオ猪木の「イノキ・ボンバイエ(炎のファイター)」とソックリなんですね。どういうことか調べてみたところ、1976年に猪木vsアリの異種格闘技戦が行われて、結果は15ラウンド判定引き分けだったのですが、猪木の実力を認めたアリが自分の入場曲「アリ・ボンバイエ」を猪木に贈ったのだそうです。

さて、今月のお題は「パンチ」。パンチのあるヴォーカルや演奏、パンチ関係(ボクシングとか)、さらにパンチパーマ?とかに関係したレコードを「アリ・ボンバイエ」を聴きながらいろいろ集めてみました。




CASEY AND HIS GROUP / COMIN' HOME BABY (POLYDOR)

以前、鈴木さんが紹介してたCRAZY CASEYの成れの果て?オランダのハモンドオルガン奏者の1971年のアルバム『COMIN' HOME』からのシングルカットです。メル・トーメやハービー・マンのヴァージョンが有名な「COMIN' HOME BABY」のカヴァーは、ワイルドでパンチのあるモッドジャズでグイグイ攻めまくります。僕の知る限り英国のペドラーズと並ぶこの曲の最高のヴァージョン。特に中盤の糸を引くような怒涛のハモンドソロには圧倒されます。



JALIL BENNIS ET LES GOLDEN HANDS / MIRZA (BARCLAY)

『ミィ〜ルザァ〜』なパンチ力抜群の絶叫で幕をあける謎の仏産7'。楽曲自体は仏で活躍したイタリア人NINO FERRERの名曲のグルーヴィーなカヴァーですが、このJALIL BENNISとそのGOLDEN HANDS、国籍不明、年齢不詳、目線も『?』(笑)で、見た目通りかなり怪しいです。音の方は一聴するとかなり格好良いんですが、何故かサーフ調のギター(特に中盤のソロがかなりいかがわしい)で突っ走る面白グルーヴィーな仕上がり。どういう経緯でリリースに至ったか知りたい傑作です。



ORCHESTER AMBROS SEELOS / DANCE FOR EVERYBODY (MPS)

ドイツのサックス奏者アンブロース・セーロース(?)率いる男性7人組のアルバム。ヴォーカル入りのナンバーも何曲か入ってますが、インスト物にグルーヴィーな曲がある。注目曲はジミー・スミス「THE CAT」のカヴァー。ペドラーズのようなハモンドオルガン唸りまくりのモッドジャズで非常にかっこいい。パンチの効いたハモンドと急速調のリズム、途中でフォービート・スウィングに切り替わるナイスな展開もあり。



LES MUSICIENS / MONSIEUR L'CURE N'VEUT PAS (FESTIVAL)

フランスの大所帯コーラスグループLES MUSICIENSの4曲入りEP盤。ジャズというよりもポップス的な楽曲をバックに弾けたコーラスワークを披露しています。ここでは彼等のテーマ曲とでも言えそうな、その名も「LES MUSICIENS」がパンチの効いたイントロから一気に駆け抜けるポップなジャズコーラスで良い感じ。とにかく明るいのが取り柄っぽいですが(失礼)、イントロの印象的なピアノのフレーズからヒップホップ的なビートで進む「KATMANDOU」で聴けるファンキーサイドも中々。



SPARROW'S TROUBADOURS / HOT & SWEET (RA)

ヴァン・ダイク・パークス『DISCOVER AMERICA』にも参加したカリプソの帝王マイティ・スパロウ。相当数の録音を残していて傑作も多いのですが、これは1970年頃の録音だと思う。全体的にカリビアン・ポップスという雰囲気で、ペトゥラ・クラーク「DON'T SLEEP IN THE SUBWAY」とかをカリプソ風味にカヴァーしてます。最高なのは「SOULFUL STRUT」のカヴァー。相当イナタいカリビアンR&Bなサウンドですが、元曲が良いだけに悪いはずがありません。



PUCCIO ROELENS / RESERCH OF SOUND (EDIPAN)

ローマ出身の作曲家PUCCIO ROELENSが同じくローマのライブラリーレーベル(?)EDI-PANに残したファンキーな作品。冒頭パンチの効いた痛快なドラムブレイクで幕をあける「SPLASH DOWN」からかなり格好良く、同じくシャープなカッティングギターを交えたイントロのブレイクも美味しい「THE REAL TASTE OF REPEAT」、ストリングスが心地良く舞うミディアムテンポのジャズファンク「A STILLNESS SONG」...無機質なジャケットとは裏腹にファンキーな色付けのされた好盤です。



LOS HNOS. CASTRO / EN LA ONDA DE... (RCA)

メキシコの男性4人組グループ。フォー・フレッシュメンのような超絶コーラスが売りのコーラス・グループだと思いますが、サウンドはセルメン・クローンとしてお馴染みのLOS BRASILIOSと似たような雰囲気です。「MAS QUE NADA」の次第にヒートアップしてくるラテンボッサ風カヴァー、パーティノイズにハンドクラップが俄然盛り上がる「AJA...BIBI」、キャッチーなラテンナンバー「CUCURRUCUCU PALOMA」とかもかなり良い感じです。



YURI NISHIMURA / LIVE IN NEMU (CBS)

実力派女流エレクトーン奏者、西村ユリさんとその仲間達が1972年の真夏に、三重県は合歓の郷で二日間に渡って繰り広げた野外ライヴアルバム。エレクトーンの代りにオルガンを用い、パンチの効いたブラスセクションとともにファンキーに聴かせる痛快な作品です。悲運のグループ、チェイスがヒットさせた「黒い炎」で聴かせるオルガンとブラスの激しい掛合いを筆頭に、オシビサのアフロファンクまで取り上げて熱く盛り上げてます。でも一番パンチが効いてるのは、MCで参加の小林克也氏の英語の喋りだったりして。



MISTER MALCOLM / CLAPPING SONG (VOGUE)

微妙にパンチパーマのミスター・マルコムという(フランスの?)黒人男性シンガー。御存知シャーリー・エリスのモッド手拍子ソング「CLAPPING SONG」をカヴァーしてます。1971年録音ということで、オリジナルよりもリズムが相当ガッチリしていてダイナミックレンジも高く、ドラムブレイクから始まる展開もクラブプレイし易いです。さらにパンチの効いた男性ヴォーカル&コーラスも最高。B面「THEY ARE TAKING ME SWAY」もファンキー。



PROCUSSIONS / ALL THAT IT TAKES (PROCUSSIONS)

大自然に恵まれたコロラド出身の2MCとトラックメイカーからなるヒップホップユニットPROCUSSIONSのデビューシングル。最近多いこの手のグループですが、この「ALL THAT IT TAKES」はとにかく痛快です。冒頭高らかに鳴り響くホーンループがとにかくパンチ力抜群、故に頭でっかちになりそうですが、そのフックから一転軽快にスウィングする長〜いジャズピアノの使い方もセンス抜群。FEARLESS 4の「ROCKIN' IT」を大胆に使う、勢い溢れる2MCのセンスもあわせて見事です。




01,03,05,07,09: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,06,08,10: Masao MARUYAMA (musique dessinee)