2004.5
ゴージャスという言葉から思い出すのが、ジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーヴが共演した映画『幸せはパリで(THE APRIL FOOLS)』の冒頭のパーティのシーン。モダンアートとモードファッションが散りばめられたあのパーティのシーンこそ、僕のイメージするゴージャスと繋がっています。

今月のテーマは「ゴージャス」。ゴージャスなサウンド、豪華なスタッフで制作されたレコード、ゴージャスなジャケット・・・。ゴージャスとは縁遠い生活をしている僕ですが、せめて音楽だけでもゴージャズに行ってみたいと思います。




MICHEL COLOMBIER ETC... / CREATIVE POP (IML)

この手のライブラリー物の楽曲のスタイルを表わす時に良く用いられる'POP'という言葉。その言葉の響き以上にファンキーである事が多いんですが、これも多分に漏れずファンキーでパンチ力のあるインストグルーヴが集約した傑作盤。仏の1960〜70年代のダンス物コンピにたまに収録されてる唸るオルガン&打ってるドラムの「HOODLUM'S PARADE」のように、恐らくは色んな盤からの寄せ集め楽曲集なんですが、ゴージャスなホーンが炸裂するMICHEL COLOMBIER作の「MEMPHIS」や前述のナンバーを筆頭にほぼ全編迫力満点の仕上がりです。



NICOLE CROISILLE / SES GRANDES SUCCUS (MUSIDISC)

映画『男と女』で♪ダバダバダ〜とスキャットしてたフランスの女性シンガー、ニコル・クロジワル。このアルバムは1960〜70年代の曲を集めた編集盤かな?「パリのめぐり逢い」を始めとするピエール・バルー=フランシス・レイの曲が3曲収められていますが、オープニング曲「QU'EST-CE QUI SE PASSE DANS MON COEUR」が絶品ですね。ゴージャスなホーンセクションと♪ラララ〜で始まるグルーヴィー・ソフトロック。風に舞いそうな儚げなメロディーも素晴らしい。



LOS JOAO / BATUCADA CON... (MUSART)

ゴージャスな衣装で繰り広げられるカーニヴァルの様子が楽しいLOS JOAOなるグループの77年作品。裏ジャケに写る怪しい風貌の7人のオジさま方はゴージャスとは程遠いんですが(失礼!)、内容はタイトル通り陽気なブラジリアンの名曲カヴァー集。NONATO BUZARの洒落たボサノヴァ「AMIGO JOAO」や「SAMBA CRIOLLA」のカヴァーも良いですが、ここでの白眉はWANDOの大人気曲「NEGA DE OBALUAE」のカヴァー「NEGRA」。歓声から幕をあけ、元曲以上にスピーディーに展開して行く真夏仕様の盛り上がりカヴァー。



SILVIO SILVEIRA / BOSSA NOVA AD ALTA QUOTA (BARCLAY)

ブラジルのSILVIO SILVEIRAが(たぶん)イタリアで吹き込んだボサノヴァ・アルバム。ジェット機の窓から見える風景のジャケットも素敵。オープニング曲「BIM BOM」は跳ねたボサノヴァ・リズムにグルーヴィーなハモンドオルガンが舞うナンバーで、分厚い混声ヴォーカルも何ともゴージャス。他の曲はインストやスキャット入りの曲が多くて、(SILVIO自身の?)スキャットやシヴーカ風の切れの良いアコーディオンの音色がゴキゲンです。



ENRICO PIERANUNZI / NEW & OLD JAZZ SOUNDS (EDIPAN)

5歳の頃からピアノをプレイし始めたというイタリアの名ジャズピアニストENRICO PIERANUNZIによるマイナーライブラリー盤。どういう企画でこの盤が作られたかは分かりませんが、タイトル通り片面ずつ全く違う事をやってます。B面のOLDサイドはオールドタイムジャズをやってて余り面白く無いのですが、完全にピアノトリオで聴かせるA面は素晴らしい。エレガントなジャズワルツの「THE MOOD IS GOOD」や気持ちラテン入ったスピード感溢れる「NIGHT LIGHT」等、何故ライブラリーでリリースしたのか分からない程格好良い楽曲なんです。



ORLANE PAQUIN / LE TRAIN DE 10 H 03 (PRODUCTION: ML)

"プロダクション:ミシェル・ルグラン"というレーベルからリリースされた女性シンガーのシングル盤。プロデュースはミシェル・ルグラン、バッキングはアラン・ゴラゲール、「ロシュフォールの恋人達」で歌っていたCLAUDE PARENTも制作に関わっていて、結構ゴージャスなスタッフ陣。A面「LE TRAIN DE 10 H 03」は2分にも満たない曲ですが、哀愁漂う美しいメロディーが、まさにルグラン・タッチのボサノヴァ曲。彼女の知的なヴォーカルもいい。



BETH CARVALHO / ANDANCA (ODEON)

独特のハスキーで低い声質が魅力のサンバ歌手べッチ・カルヴァーリョが1969年にSOM 3やGOLDEN BOYSをバックに録音したLPと同時期のEP盤。4曲中3曲はそのアルバムには未収の楽曲で、いずれも同様のプロダクションで録音されたと思われる佳作なんですが、中でもゴージャスなホーンのイントロから軽快に滑り出す自身のオリジナル曲「GUERRA DE UM POETA」が素晴らしい。SOM 3節全開のスリリングなアレンジと少しずつ盛り上がる曲調もドラマチックです。



ANITA HARRIS / ANITA HARRIS (MARBLE ARCH)

イギリスの女性ヴォーカリスト、アニタ・ハリスの1960年代後半のアルバム。バート・バカラックの曲を何曲もカヴァーする辺りにペトゥラ・クラークを髣髴とさせるところもある。「UPSIDE DOWN」「I RUN TO HIDE」はゴージャスなビッグバンドアンサンブルと華やかなヴォーカルが魅力。ティンパニーのバネのようなな音色も面白い。「MOODY SOUL」は深く沈みこむウッドベースの音色をアーシーなハモンドの音色が効果的なキャッチーなソウルジャズ。



ROY BUDD / THE MUSIC OF GILBERT O'SULLIVAN (PYE)

「ALONE AGAIN NATURALLY」のヒットで知られる英国のSSWギルバート・オサリバンの名曲の数々を、同じく英国のジャズピアニストROY BUDDがカヴァーした企画盤。基本的には洗練されたエレクトリックピアノをメインに優雅なオケと共に聴かせるラウンジ盤で、上品な仕上がり。が、1曲、オサリバンの1STに収録された隠れたファンキーナンバー「TOO MUCH ATTENTION」だけは様子が違います。イントロからゴージャスに鳴りまくるオケとスピーディな曲展開、そしてROYもここぞとばかりに弾きまくるファンキーな仕上がり。テンション高いです。



LOUIS BELLSON & THE THE "EXPLOSION" ORCHESTRA / SUNSHINE ROCK (PABLO)

ジャズドラマーのルイ・ベルソンがドラムが壊れそうなくらいに叩きまくるゴージャスかつグルーヴィーな一枚。プロデュースはノーマン・グランツで、1977年ハリウッド録音。「RICH OUTING」はドラムブレイクから始まる疾走感溢れるナンバーで、途中でフォービートにシフトするしなやかな展開も気持ちいい。後半のドラムソロはクラブプレイには不向きだけど・・・。鋭くスウィングするフォービート・ナンバー「NIGHT BIRDS」、ボッサ風「FEELS SO GOOD」なども秀逸。




02,04,06,08,10: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,03,05,07,09: Masao MARUYAMA (musique dessinee)