2004.4
4月29日は「緑の日」ですが、この祝日の意図は、自然に親しむと共にその恩恵に感謝し豊かな心を育むことなのだそうです。やはりこの季節の草木の緑は美しく、その中に自分を置くとすがすがしくて気持ちが良いものです。

今月のテーマはそんな緑溢れる季節にピッタリな「緑〜グリーン」です。緑色のジャケット、草木関係のナンバー、そして長く愛される名曲という意味もあるエヴァーグリーンなど、緑にまつわる曲をいろいろ集めてみました。




PAUL RUYS / LOVER COMES SWING WITH ME! (PHILIPS)

ミラーズ『SOFT SWING IN STEREO』で歌っていたオランダの男性歌手&鍵盤奏者(たぶん)の1966年ソロ作。ソウル・バスがデザインした『黄金の腕』のサントラようなジャケットデザインも好き。彼は本作では歌ってないですが、ベース、ギター、ドラムスを率いて、ハモンドオルガン弾きまくりのグルーヴィーなソウルジャズを演奏してます。「WATERMELON MAN」「WORK SONG」とかの有名曲もソウルフルに料理してます。



V.A. / ALL KINDS OF HARMONICA (CAM)

ハーモニカと言えば小学校の授業でも習う定番楽器ですが、その音色は「哀愁」を体現したかのようなどこか切ないたたずまい。イタリアサントラの名門としても知られるCAMからリリースされたこの緑ライブラリーの161番はタイトルが物語る通りグルーヴィ−なハーモニカサウンドのショウケース。スタイルは様々ですが、ここではディスコのトラックが良い出来。タイトルその名も「THE FUNKY HARMONICA」はエレピとの絡みもあってかタイトル以上にメロウな仕上がり。加えて「GROOVY HARMONICA」も同様にフロアー仕様の哀愁のメロウディスコ。単純/明確なコンセプトに拍手です。



STAN GETZ / REFLECTIONS (VERVE)

緑の芝生の上に寝そべって煙草を燻らすスタン・ゲッツ。ボサノヴァの超有名盤『GETZ/GEILBERTO』の前年、1963年の作品ということもあって、ボッサやラテンやジャズなど、ヴァリエーションにも富んだサウンドが楽しめます。特にスキャットコーラスをフィーチャーした「LOVE」がグレイト!ボンゴ・パーカッションも打ちまくりの急速調スウィング・ラテンジャズ。クラウス・オガーマン&ラロ・シフリンの艶やかなビッグバンド・アレンジも冴え渡っております。



LILIAN TERRY / MILLE PAROLE D'AMORE (GTA)

ベテランジャズピアニスト、トミー・フラナガンとの共演盤も素晴しいイタリアの女性シンガーLILIAN TERRYの7'シングル盤。タイトルは『1000の愛の言葉』と言う事でかなりメロメロな詩の内容なんでしょうが、音の方もラブリーなイタリアンボッサで素敵です。バックを務めるのはラテンジャズ盤も人気のANGEL "POCHO" GATTI(凄いデカい人)、流れるような淡々としたボッサビートに美しいフルートの響き、LILIANの艶のあるヴォーカルも絶妙にマッチしています。きっとこの人はとても歌が上手なのでしょう。



DJALMA / HELP YOURSELF TO THE BRAZILLIANCE OF DJALMA (DOT)

ブラジルのジャルマ(DJALMA FERREIRA)が海外のマーケット向けにリリースしたアメリカ録音盤(1966年リリース)。グルーヴィーなオルガンやクールなヴァイヴをフィーチャーした曲が多くて、ワルター・ワンダレイやエド・リンカーンのファンなら気に入るのでは。「SOUL LIMBO」は細かく刻まれるシンコペーションとアップリフティングなコード感が心地良いナンバー。映画『おかしな二人(THE ODD COUPLE)』の主題曲もブラジル風味を取り入れていて面白かった。



EUGEN CICERO IN TOKYO / MY LYRICS (COLUMBIA)

プレイバッハでお馴染みの仏のジャック・ルーシェとこのオイゲン・キケロ、日本では何故か「ああ、あのクラッシックの人?」という印象が強い人なんですが、言うに及ばず優れた作品を一杯作ってます。このキケロ・イン・トーキョーはタイトルそのままに72年の来日時に日本で録音された彼の傑作の一つ。DAI BOWENの叩き出す打ってる8ビートにキケロの思い描いた弾けた東京のイメージが乗るファンキーな「BEAUTIFUL TOKYO」の格好良さ、日本人なら誰でも知っている滝廉太郎の名曲「花」の美しさは言葉になりません、どこまでも美しいピアノが響き渡ります。



STEN & STANLEY / STEN & STANLEY (TELESTAR)

スウェーデンのステン・ニルソン率いる男性5人組、ステン&スタンリーの1968年作。米英の1960年代ヒット曲のソフトロック・カヴァーが多いです。「REGNET STRILAR NED」はジョルジ・ベン作のボサノヴァ「JOKER」。セルジオ・メンデスのスタイルで巧くカヴァーしてます。いちばんのお気に入りはハッピーなラララーコーラスで一気に幸福感に包まれる「TRA-LA-LA (SJUNG MED OSS)」。そして彼らは現在も活動を続けているらしい。



TED CURSON / BLUE PICCOLO (TRIO)

今も現役で活躍するフィラデルフィア出身のジャズトランペッター、テッド・カーソンの76年のNY録音盤。ジャズファンには人気のある人ですが、ソロ作ではそこまでインパクトのある作品は無いかも知れません(あくまでも私見です)。この作品は日本でしか発売されていない割と珍しい盤ですが、冒頭のJEROME CAHNの名曲「ALL THE THINGS YOU ARE」がとても良い出来。CHET BAKERのそれとはまた違った味わいと、力強さの中にも優しさの感じ取れるプレイで聴かせます。強いて言えばクリフォード・ブラウンなんかを想像させるメロディアスな名演です。



KITTY WHITE / KITTY WHITE (CLOVER)

三つ葉のクローバーをモチーフにしたレーベル・ロゴのCLOVERというビバリーヒルズのレーベルからリリースされたインディ・ジャズ。イヴ・サン・ローランのコスチュームを身に纏ったキティ・ホワイトという女性ジャズ・ヴォーカリスト/ピアニストの1960年代の作品です。全体的に大人しい作品ですが、オープニング「VISIT ME」からモダンなアンサンブルのジャズワルツ、「BOSSA NOVA ALL THE WAY」も隙間を生かした空間的なアレンジがナイス。



CLIMBER / DOWNTOWN LOOP (BOTANICA DEL JIBARO)

チリ育ちの日系人DJ、DJ TOSHと同じくチリ出身のSHIFTからなるインストヒップホップ/ブレイクビーツユニット CLIMBER。サンプリング主体の作風ながら、古くも幅広いネタの拾い方や歌心すら感じ取れるネタの組み合わせの統一感に独特な物を感じる注目のユニット。ブラジルが誇る極上の美メロメイカーLO BORGESの名曲「TUDO QUE VOCE PODIA SER(君がなれたすべて)」を大胆に使った「CAFE CON PIERNAS」や切なくループするエレピの響きがひたすら心地よい「ONE FLUSH LEFT」等、じっくり部屋でも聴ける滑らかな仕上がり。凝った作りのジャケもクール。




01,03,05,07,09: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,06,08,10: Masao MARUYAMA (musique dessinee)