2001.07
ジメジメした梅雨が明けて、太陽が照り返す夏がやってくるまでもう少し。僕は夏の暑さにはいつも参ってしまうけれど、夏独特の気分の高まりは大好きなんです。そしてこの光溢れる季節になると、どうしても聴きたくなってしまう音楽があるのです。今年の夏は特にブラジリアン・ビートが熱い感じですね。

今月のテーマはズバリ「夏」。暑い日に暑苦しい音楽を聴いて夏を満喫するも良いし、涼しげな音楽を聴いてクールに乗り切るも良い。そして夏が来るまで待てないアナタは、ここで紹介するような音楽を聴きながら、夏のヴァカンスのプランでも立ててみるのは如何でしょうか?

Toru WATANABE (pee-wee marquette)



SKOL INTERNATIONAL (---)

夏はビールがウマイ!このシングルは「スコール・インターナショナル」というビールのCMソングらしいけど、アーティスト名やレコード会社などのクレジットは一切ナシ。きっと販売促進のために制作されたノヴェルティ・レコードなのだと思う。A面は混声ヴォーカルで歌われる爽快感溢れるソフトロック・ナンバー。サマンサ・ジョーンズが歌うフォード車のCMソング「THE T.C. THEME」のようなキャッチーなメロディに耳を奪われます。B面はサックスなどがリードを取る涼しげなボサノヴァ・ヴァージョンでこちらも最高。



LUIS ENRIQUEZ / A CIASCUNO IL SUO (PARADE)

イタリアサントラ。『悪い奴ほど手が白い』という邦題は何となくフィルム・ノワール的なものを連想させる。映画の内容はLUIS ENRIQUEZ作曲、BRUNO NICOLAI演奏という豪華コンビの作り出したピアノと壮大なオーケストレイションが印象的な美しい主題曲の雰囲気に近いものであろうが、音的にはやはりそのテーマ曲をアップテンポのボッサビートに乗せた「SAMBA」が素晴らしい出来。メロディー、ピアノの音色の美しさはそのままに、今で言うならニコラ・コンテ風のグルーヴィーなリズムトラックを生演奏で生み出している。伊盤7'は、米盤LPに収録の別アレンジ曲より音圧も高く、アレンジにも無駄が無くクラブ向き。黄色いジャケットもクール。



FRANCO CERRI / BOSSA NOVA (COLUMBIA)

スーツに身を包み、ギターケースを片手に微笑むFRANCO CERRI。アルバムタイトルは『BOSSA NOVA』。イタリアの洒落者の雰囲気満点。アルバム通してその雰囲気はまさにイタリアの爽やかな夏。A.C.JOBINの曲を始め、ブラジルの名曲のカヴァーが続くが、自作曲の素晴らしさがまた魅力的。特に「SAMBALANCA」は軽快なテンポに乗って奏でられる口笛が夏の暑さを忘れさせてくれる。イタリアの避暑地でのんびりと昼寝したり泳いだり…なんて現実に戻るのがイヤになるような夢を見させてくれる素晴らしいラウンジ〜ホームリスニング向けなアルバム。



CHARLIE BYRD & ALDEMARO ROMERO / ONDA NUEVA - THE NEW WAVE (COLUMBIA)

チャーリー・バードがスペインのALDEMARO ROMEROと共に1960年代末に制作したアルバム。"オンダ・ヌエヴァ"というのは"新しい波"という意味で、6拍子ジャズとボサノヴァをドッキングさせたような音楽。波打ち際に立つ水着の女性のジャケットが妙に示唆的です。アップテンポの曲では、キレの良いリムショットに粒立ちの良いギター、女声スキャットも入ったりしてかなりカッコいい。大部分の曲がALDEMARO ROMEROのオリジナルですが、バカラックの「世界は愛を求めている」も演っています。プロデュースはテオ・マセロ。



LEE SELMOCO ORCHESTRA / DAYTIME MOODS (VEDETTE)

鮮やかなブルーが目を惹くイタリアン・ライブラリー。ヒップでキャッチーなジャズをベースに、いかにもイタリア的な軽妙なオルガン、ピアノ、ヴァイブをフィーチャーし、リズムも適度に打っている辺りからして、タイトル通りに日常の身近な場面をイージーなBGMとして演奏する凡庸なライブラリー物とは決定的に違う。ピアノメインの疾走感溢れるチネジャズ風の「FUGATO A 2」、力強いリズムにヴァイブが絡む「QUIET RIVER」、ボサリズムの「MARIPOSA」はオルガンとヴァイブの相性が良い。そして白眉はミッシェル・ルグラン「MY BABY」のイタリア版と言えそうな「CITY BLUES。前面に押し出された力強いピアノに巧みなオルガンが絡み、ヘヴィーでは無いもののドラムは打っているラウンジ・グルーヴな1曲。



DUNCAN LAMONT / SUMMER SAMBAS (MFP)

VOICES IN LATINのイギリス盤を出してるモーガン・レーベルの作品をチェックしていて出会ったダンカン・ラモンという英国のサックス奏者。いろんなタイプの録音を残していますが、これは1973年リリースのボサノヴァ・アルバム。アルバム全編がヴァイブなどをフィーチャーした気品溢れるラウンジボッサで、「SUMMER SAMBA」などのボサノヴァ・スタンダードに混じって「MY CHERIE AMOUR」「ALONE AGAIN」のカヴァーも収録。そして「FELICIDADE - SAMBA DE OFREU」のメドレーがアルバム中で唯一打ってるボッサビートでフロア向け。曲が変わる瞬間はまるでDJがミックスしているかのよう。



KENIA / DISTANT HORIZON (ZEBRA)

ブラジルからニューヨークへと渡った女性ヴォーカリスト、KENIAのアルバム。アメリカナイズされたサウンドはまさにリオとニューヨークを繋ぐ都会的かつメロウ&スムーズなサウンド。収録曲の多くはブラジルもののカヴァーであり、洗練されたサウンドと相まって今の雰囲気にぴったりです。特に光っているのはTONINHO HORTA作「DISTANT HORIZON」。KENIAのソフトな歌声と、流れるようなブラジリアン・リズムの心地よさは夏の暑さを一時の間忘れさせてくれます。夏の早い時間のフロアでぜひ聴きたい一曲。



DANY DANIELLE et HENRI PIEGAY / FAIT CHAUD (DISC AZ)

南仏での一夏のヴァカンス、見知らぬ男女の淡い恋の物語。「FAIT CHAUD」はそんな風景を連想させる耳障りの良いフレンチボッサ。ゆったりとしたリズムの上をANNE GERMAINのたおやかで色気のあるスキャット・コーラスがよどみなく流れ続け、DANYとHENRI、二人の男女のとりとめのない会話が繰り返される。刹那的なシチュエーションに相反して、永遠に続きそうな美しいメロディーのループが心地良い。軽快なワルツにスタイルを置き換えた「METROPOLITAN WALTS」は、品の良い男女のラララ・コーラスが醸し出す幸福感に溢れた佳曲で、こちらも心地良く時間が流れる。



SIDNEY SOKHONA / SAFRANA, TOUMARANKE (FIESTA)

フランスのFIESTAレーベルに残された素晴らしいDISCOサウンド。実はサントラ7インチ。両面とも夏向きな爽やかなDISCOナンバー。映画のタイトル曲である「SAFRANA」はちょっと時代を感じさせる音作りですが、トラックに被さる女性の語りがかなりHIP。そしてハッピースキャットDISCO(?)と言ってもOKな「TOUMARANKE」が最高。曲調はサビのメロを転調しながら繰り返していくだけなのですが、跳ねる8ビートが心地よく、さらに前半でスローな4ビートに変わったりしてJAZZっぽさもあり、かなりお洒落。まさに夏向きなポジティヴ感満点な踊れるハッピーナンバー。



LISA EKDAHL / SINGS SALVADORE POE (RCA VICTOR)

今年上半期で一番よく聴いた新譜CDがコレ(リリースは2000年)。リサ・エクダールは北欧スウェーデンのジャズ・ヴォーカリストで「ストックホルムの妖精」とも呼ばれているらしい。彼女の舌足らずのロリータ・ヴォーカルはブロッサム・ディアリーやモニカ・ゼッテルンド辺りが近似値でしょうか。そんな彼女のスウェーデン語訛りの英語で歌われるボサノヴァやジャズの数々は部屋でまったり過ごす時に重宝します。北欧の涼しく短い夏を想いながら聴くとまた格別。クレモンティーヌとか好きな方にもオススメです。




01,04,06,10: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,05,08: Masao MARUYAMA (disques POP UP)
03,07,09: Morihiro TAKAKI (monophonic.lab)