2001.05
先月から始まったこのコーナー「プロント」ですけど、いろいろな方から感想やら頂きまして、ありがとうございましいた。特にアノ方の感想を聞いたときには胸が高鳴りました。今後ともヨロシクお願いします。

さて、今月はフレンチ特集。このコーナーでもディスク・レヴューを担当してる丸山さんが先月ヨーロッパに行ってきたんですけど、彼が某レコ屋に行ったときのこと。店のオバサンがレコードの倉庫に案内してくれて、何と数千枚のミュージックライブラリーの山に遭遇したそうです。一般人がそこに入ったのはJAZZMAN(イギリスの有名なレコ屋)のジェラルドぐらいよ、と言っていたそう。羨ましい。そのオバサンが「これが私のミュージックライブラリーのライブラリーよ」とギャグをかましたかは定かでないですが、今月も10枚のレコード紹介、行ってみましょう。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)



TITA / L'INCOMPARABLE (BARCLEY)

フランスとブラジルを結ぶ作品といえばナラ・レオン、ピエール・バルーに始まり、その最高傑作がレ・マスクである。そして彼らのバックを努めていたのがバルーによって発掘されたLE TRIO CAMARA。また、ブラジル色を感じさせる作品を残しているエディ・バークレイによって発掘されたTITA。この2つの組み合わせによって作りあげられたこのアルバムも素晴らしいものとなっている。フロアでは使えないがサウダーヂ感溢れる「LIVRO EM BRANCO」を始め、全曲素晴らしいラウンジ〜ホームリスニング向けな作品。ついでにこのTITAはブラジルでも一枚作品を残しており、素晴らしいボサノヴァを聴かせてくれる。



DANIEL JANIN / DINHA MANTHA'S POWER (PSI)

全曲最高のフレンチ・ジャズ・ファンク、未だにこれほど格好の良い音楽は聴いた事がないと言えそうなぐらいの1枚。全編に渡って響き渡るドラムブレイク、高揚するオーケストレイション、低くうねるベースラインに、各ソロ・パートの手腕も申し分無し。中でもNANCY HOLLOWAYのヴォーカルをフィーチャーした「SAND AND RAIN」は、同コンビで生み出された人気のカヴァー「HURT SO BAD」を遥かに凌ぐメロウかつグルーヴィーな1曲で、言葉を失う程にクールで感動的。もちろんタイトル曲をはじめその他のインスト楽曲も凝ったアレンジが施されていて素晴らしい、オールラウンド・クオリティな逸品。



NANA MOUSKOURI et MICHEL LEGRAND / ET SI DEMAIN (PHILIPS)

ご存知ミシェル・ルグランとナナ・ムスクーリというフランスの女性シンガーとのデュエットが聴ける1965年リリースの4曲入り7インチ。ルグランのいくつかあるヴォーカル・アルバムは、ルグランのヴォーカルが豪快すぎるところもありますけど、この盤ではナナのヴォーカルと上手く中和されてスウィートでラヴリーな雰囲気。「QUAND ON S'AIME」はウォーキング・ベースがリードするジャジーなナンバーで、中盤からの二人の寄り添うようなスキャットが印象的です。アコースティック・ギターで綴る「LA MUSIQUE DES ETOILES」もほのぼのと味わい深いナンバー。



JEAN MORLIER et sa musique dessinee / COMIC STRIP MUSIC (BAGATELLE)

ファニーなイラストが物語るイージーサウンド。タイトルからも想像可能なカヴァーのセンスはゲンスブール、ジャック・ブレルからアンドレ・ポップに至る、まさにフレンチ・イージーなLP。その典型は「CHA BA DA BA DA」。曲名が示す通りのハッピー・スキャットジャズ。女性コーラス、オルガンの音色も心地良く清々しい。しかし、特筆すべきはこれに続くオリジナル曲「TIP-TOP」で、重くタフなドラムブレイク&ベースラインで、前述の爽やかなナンバーからは想像し難いクールでファンキーなトラック。ヒップホップのリズムトラックにサンプリングされたと言えばわかりやすいだろうか。このような流れをさらりと聴かせてしまう全体の統一感も注目すべき。



ISABELLE / QUAND MICHEL CHANTE (EMI/ODEON)

ウィスパリング・ビューティー、イザベル。フランス語で歌うクロディーヌ・ロンジェという感じで、この手のフランスの女性シンガーの中では最高峰だと思っている。B-2「DEUX PAR DUEX」がA&Mポップスのように完璧にプロデュースされたボサノヴァ曲で、今ならクラブプレイもオッケーかな。1968年にリリースされたこの7インチは彼女の2枚目だと思うけど、1枚目も気が遠くなりそうな美しいソフトボッサ「MON VOISIN」が入っていてこれまた最高。イザベルに関する情報はほとんど残ってなくて、確認できたレコードも2枚の7インチだけ。誰か詳しいこと知ってたら教えて欲しいです。



VAVA / LE PETIT HOMME (CBS)

今では最も有名なフランスのグループの1つとなったMICHEL FUGAN ET LE BIG BAZAR。そのBIG BAZARのメンバーの1人、VAVAによる素晴らしいシングル。すでに多くの人に聴かれているかもしれないが、あまり取り上げられているのを見たことがないので。哀愁漂うメロディーにのって歌われる「LE PETIT HOMME」は「LA FETE」と並ぶ、まさに日本人好みの名曲。少しピッチをあげることで最高のクラブトラックに。さらにこの名曲のスペイン語ヴァージョン「EL HOMBRECITO」もあり、その言葉の違いによって新たな魅力を感じることが出来る。



PETER BEASSON / HOLIDAY FOR VOICES (SOUNDWAYS)

詳細不明のマイナー・ライブラリーミュージック。全曲PETER BEASSONなる人物の手による作品。ラウンジ、ジャズ、ボッサなんて言葉をキーワードに展開される12曲の珠玉の楽曲には全て素晴らしいスキャットがふんだんにフィーチャーされ、モノクロのジャケットからは想像できないほど色彩豊かな声色を聴かせる。良質の伊サントラに優るとも劣らないスキャット・ボッサ「CHORO BELINGO」、scat trumpet styleと称された高速スキャット・ジャズ「WALLE-STREET」は、かの『黄金の七人』のテーマ曲をさらにスマートにしたかのような流麗なナンバー。他の楽曲のクオリティーも一様に高く、興味心は全く尽きない。



KARIN, REBECCA et KATIA / LES ADOLESCENTS (HEBRA)

カリン&レベッカという女の子デュオが少し成長して、新たにカチアが加わったトリオ時代のシングル。彼女達の初期(推定4〜5歳)の曲は二人のキュートな歌声だけでオッケーという感じだったけど、敢えて不満を言うとすればどれも同じような曲調だったこと。でもこの7インチを出した時期(1972年)にはロックやポップスやソウルの洗礼も受けて、ヴァラエティに富んだ仕上がりに。ヴォーカルもほんの少し上達。ゆるいブレイクビーツのソフトロックチューン「LES ADOLESCENTS」で始まるこのコンパクト盤には子供物の魅力がたくさん詰まってます。ちなみにカリン(KARIN DEFACQ)は1980年代にソロ作も発表している。



NICKY NICOLAS / LA DANSE DU SCHUSS (CBS)

タイトなスーツを身に纏い、ショッキングピンクのジャケットの中で得意のポーズを決めるムッシュ・ニッキー。素性については詳しくわからないが、彼が数枚リリースしているレコードの中でも最もファンキーな45rpm。アップテンポのビート、グルーヴィーなシタールの音色に乗って甘口の歌声で"Schuss!"を連呼する、その名も「LA DANSE DU SCHUSS」はキャッチーなフックの応酬のまさにパーティーグルーヴと呼ぶに相応しいフレンチ・ファンキーポップス。逆サイドの「POUR LES MISS」はややテンポを落とすも、オルガンに女声コーラス、力強いホーンセクションを前面に押し出した横ノリのパーティーナンバーで、タイトル曲に勝るとも劣らぬ1曲。



GILLES RIVARD / QUELLE BELLE VIE (CBS)

70年代後半頃には数々の名作と謳われるAORアルバムが存在する。そんな名作と呼ばれるAORの作品の中には、そのミュージシャン達の音楽的素養の高さ、そして貧欲な音楽的探求により様々な音楽スタイルと素晴らしいメロディーラインを組み合わせることによって名曲が作りあげられている。このアルバムに収録されている「PAROLIER」という曲は、軽いブラジル風味と女声コーラスによって「ラララ〜」と歌われるおいしすぎるサビのメロディーの組み合わせによるまさに名曲。でも残念なことにこの曲以外はまるっきりダメ。故に無名。




03,05,08: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,07.09: Masao MARUYAMA (disques POP UP)
01,06,10: Morihiro TAKAKI (monophonic.lab)