2001.04
皆さんはじめまして。今月からOrgan Bar Webでマンスリーチャート「プロント!」を担当することになったpwmワタナベです。僕は辰緒さんの作る音楽やDJが大好きだし、オルガン・バーの雰囲気も大好きだ。それに少し前までここでチャートを書いてた大芝君とは昔からの友人。なので、ここでこうしてチャートを書くことが出来るのをとても嬉しく思います。

チャートは僕(ワタナベ)と僕の二人の友人と一緒に書くことにしました。ひとりは神戸でパーティーを開いたりフリーペーパーなどを作って活動しているdisques POP UPの丸山さん。もうひとりはmonophonic.labというページをやっている高木さん。毎回テーマを決めて僕らが気に入ってるレコードを10枚づつ紹介していこうと思います。今月のお題は…オルガン・バーってことで、オルガン特集!
Toru WATANABE (pee-wee marquette)



JANET PIDOUX / LA CLASSE DE JAZZ (ARION)

どこの国にでも存在してそうなダンス・エクササイズのレコード、これはフランス産の1枚。面白いのはショート・トラック中心の構成で様々なテンポで繰り広げられるジャズ・セッションが全てオルガンとドラムのみという究極にシンプルなコンビネーションで作られていること。即興性に溢れるオルガニストJACQUES-LOUISE CARREのプレイと小気味よく正確なリズムを刻み続けるPATRICK PETIBONのドラミング。両者のバランスが生み出す独特のグルーヴ感と隙間の妙がほのかなエスプリを匂わせる。ラウンジ映えしそうな楽曲が多く、けだるい乾いた雰囲気が全編を貫くクールな1枚。



ZE MARIA, SEU ORGAO E SEU CONJUNTO / TUDO AZUL (CONTINENTAL)

ブラジルのオルガン奏者、ゼ・マリアの1960年代のアルバムで、若き日のジョルジ・ベンがヴォーカリストとして参加している。音の方は、晴れた日に海辺で聴きたくなるような明るく開放的なジャズボッサ。涼しげなオルガンの音色です。全12曲中7曲がヴォーカル入りで、他はオルガンが前面に出た演奏になってる。ヴィニシウス=ジョビン作「SO DANCO O SAMBA」やジョルジ・ベン作「MAS QUE NADA」のようなスタンダード曲に混じって、ゼ・マリアのオリジナル曲も良い。後に録音するアルバム『ESQUEMA 64』は、本作とは対照的に"夜"というイメージだったな。



BIG JULLIEN / REMMBER OTIS, ONE OSCAR FOR EDDY (RIVIERA)

フランスのトランペット奏者、BIG JULLIEN(IVAN JULLIEN)のシングルです。この人は「L'ORCHESTRE」や「SOUND NO1」のようなファンキーボッサな曲を収録しているアルバムが人気のようですが、僕が一番好きなのはレアグルーヴなこのシングルです。トランペットに絡むオルガンが最高。元々レアグルーヴが大好きで、このシングルやミシェル・ルグランの「ONYX BAR」、 FRED VAN ZEGVELDの「HAMMOND ORGAN DYNAMITE」に代表されるようなファンキーでレアグルーヴなもの=オルガンというイメージがあります。そんな中で特に好きな一枚。



JULIETTE / JE T'AIME MOI NON PLUS (METRONOME)

色んな意味で物議を醸したセルジュ・ゲンズブール&ジェーン・バーキンの「JE T'AIME MOI NON PLUS」。当然のごとく色々なカヴァーが存在するわけですが、これはジュリエットという女性によるカヴァー・シングル。A面「ジュテーム」はオリジナルのように割とノッペリとしたオルガンの入ったオリジナルに良く似たカヴァー。B面「MON AMOUR」はもっと良い。ファンキーなオルガンをフィーチャーしたブレイクビーツ・ナンバーで、何度となく現れる男性のナレーションと相俟ってとてもヒップな印象を受ける。コンピによく入ってるギー・ボワイエの「BONGOS & SOUND」にも近い感触。



MIGUEL RAMOS - VOL13 / ORGAN HAMMOND (HISPAVOX)

オルガニストって世界中に相当な数がいますが、この人物はギリシャの人です。どんな人なのかまったく詳細は知りません。ただ、このアルバムもVOL.13ということで少なくともあと12枚はアルバムを出しているのではないかと思います。でもこの人、別にすごいかっこいいとかファンキーとかってことは全然なくて、どちらかというと緩いイージーリスニングなタイプですね。「TIN MAN」という曲がいいです。フロアなんかじゃ全く機能しない曲ですがSHCEMAものとか好きな人には分かってもらえると思う女性スキャットコーラスも乗る素敵な一曲。



ARMANDO TROVAIOLI / MAIGRET A PIGALLE (NAZIONALMUSIC)

ジャズ・ピアニストとしてその音楽キャリアをスタートさせたアルマンド・トロヴァヨーリ。その数多いサントラ作品はジャズのエッセンスを多分に感じさせる、もちろんオルガン・プレイにおいても。この『MAIGRET A PIGALLE』なる1967年のマイナーサントラ7'も、伊映画なのに仏語のタイトル、表裏同じのジャケット、収録3曲が全て同じ曲名というコレクター泣かせの謎の1枚。ただ音楽的には全曲トロヴァヨーリのオルガンをメインにした好盤で、主題曲と思われる口笛をフィーチャーした哀愁感漂うA面、B-1は緩やかなオルガンが印象的なラウンジ・ジャズの佳曲。白眉はB-2のオルガン・ビート、ガレージ風のドラミングに生々しいギターカッティング、そしてメインのハモンド・オルガンはほとんど歌っているかのよう。彼が背中を丸めて軽快に鍵盤を叩く姿が目に浮かぶ。



ED LINCOLN / ED LINCOLN (SAVOYA)

ワルター・ワンダレイと共に人気のブラジルのオルガン奏者エド・リンカーン。コンピに良く入ってる「COCHISE」収録のMUSIDISC盤(社交ダンスのジャケ)が数年前に再発されましたね。本作はそれと同じタイトルのSAVOYA盤(1968年)で、僕にとってはMUSIDISC盤よりも好きなアルバム。オルガンは全編に渡ってフィーチャーされていますが、収録曲の半分くらいはヴォーカル入りです。アップテンポの「WALDEMAR」はムシ声っぽいハイトーンの女性コーラスの入った楽しいナンバー。男女ふたりが"ボンジュール"と囁き合う「BON-JOUR」はフレンチ・テイストのソフトボサで、思わず涙が…。いい曲だなぁ。



BERNARD ESTARDY / PIANO ET ORGUES VOL.2 (TELEMUSIC)

「ピアノとオルガン」。タイトル通りのマッドなオルガン&ピアノ・プレイのショウケース。ニノ・フェレールのキーボーディスト、あるいは再発されたバロン名義のLPで知られる仏の才人ベルナール・エスタルディ。このフレンチライブラリーに残された1枚ではソロLPのようなバラエティは無い代わりに、筋の通ったキャッチーなグルーヴ感を堪能出来る。シャッフル、パーカッション、パンチの効いたブレイクビーツ等、ヒップなリズムトラックをバックにこれでもかと言わんばかりに弾きまくる快作。力強いビートに微かに聴こえる叫び声がファンキーな「TEMPO PUNCH」、ミディアム・テンポのサンバ「FORMULE 3」がフロア向け。



SHIRLEY SCOTT / SOMETHING (ATLANTIC)

シャーリー・スコットはジャズ・ソウルの世界では非常に有名な人ですね。数多くのアルバムを残していますが、このアルバムはソウル色が強いアルバムです。自作曲はたった一曲で他は全てカヴァーです。その中でオススメなのがジャクソン・ファイヴの代表曲である「I WANT YOU BACK」のカヴァー。この曲はご存じのとおり数多くの人にカヴァーされている名曲です。アルバムに収録されているヴァージョンは、バックの演奏がオリジナルと勘違いしそうなくらいに似ています。ヴォーカルパートはオルガンでやっちゃってますが、バックがそっくりなだけにかなりグルーヴィー。



ANDRE BRASSEUR AND HIS MULTI-SOUND ORGAN / ANDRE BRASSEUR (HEP)

アンドレ・ブラッスールはベルギーのオルガン奏者で、本国ではなかなかの人気者らしい。「SPECIAL 230」「STUDIO 17」など、かっこいい曲満載の1960年代のファースト・アルバムはモッズが好みそうなアイテムでしたが、こちらはカヴァーが多くフロア向けの一枚でもある。1981年作。アルバム冒頭からいきなりアバの「DANCING QUEEN」のカヴァーで大盛り上がり。「TEQUILA」の女声コーラスを配した面白い解釈のカヴァー「TOO MUCH TEQUILA」。そしてニコ・ゴメス作のキラー・ブラジリアン「AQUARELA」。さらにオリジナル曲「THE DUCK」はパーティーノイズというか絶叫というか…この盛り上がりはヤバイ!




02,04,07,10: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,06,08: Masao MARUYAMA (disques POP UP)
03,05,09: Morihiro TAKAKI (monophonic.lab)